近年、視力回復手術の中でも話題を集めるICL(眼内コンタクトレンズ)に関して解説していきます。
ICLとは、眼のなかに「生体に安全な専用のコンタクトレンズ」を挿入する手術で、強い近視・遠視も矯正でき、元に戻すことも可能です。
ICLとはなにか、眼にいれるコンタクトレンズとはどういったものなのか、メリットやデメリットなど、詳しく解説していきます。
ICLとは
ICL(Implantable Collamer Lens)は、眼内に特殊なレンズを挿入することで近視、遠視、または乱視の矯正が可能な手術です。
「白内障手術」をもとにしているため、ICLと白内障手術は似ていますが、少し異なります。
白内障手術では、濁った自身の水晶体(眼の中でレンズの役割を果たす部分)を砕いて取り除いたあと、代わりに人工眼内レンズを挿入します。
その点、ICLでは自身の水晶体はそのままで、「虹彩と水晶体の間(後房)」に小さな人工眼内レンズを挿入します。
この小さなレンズがメガネやコンタクトの代わりを果たすため、裸眼での生活が可能になります。お手入れ不要のコンタクトレンズを常につけた状態、と思っていただくと分かりやすいかもしれません。
手術は両眼30分程度で終了し、点眼麻酔を使用するため痛みもほとんどありません。
また、レーシックとよく比較されますが、ICLはレーシックと違って角膜の組織を削ることなく視力を矯正するため、角膜が薄い人や高度な近視の人にも適しています。
さらに、レーシックでは角膜を元に戻すことができませんが、ICLでは眼の中に入れたレンズを取り出すことで元の状態に戻すことが可能です。
ICLのメリットとデメリット
ICLのメリット
1
メガネ・コンタクトなしで
過ごせるようになる
コンタクトレンズの定期的な取り外しや日々のケアが不要となり、裸眼での日常をもっと快適に楽しむことができます。また、常時メガネやコンタクトレンズを持ち歩く必要がなく、失くすリスクもないため、非常時にも安心です。
2
長い目で見ても視力が安定する
レーシックでは治療後近視のリバウンドが報告されていますが、ICL治療は手術後の視力変動が少なく、長期的に安定した視力を維持することが期待されます。
3
視力矯正の幅が広い
強度近視や角膜が薄い方など、他の屈折矯正では難しいケースでも適用が可能です。
4
安全かつ低侵襲な手術
ICLはSTAAR Surgical社が製造するレンズで、2014年に日本の厚生労働省から正式に認可を受けています。この治療は、ライセンスを取得した眼科医だけが実施することが許可されており、全世界での治療実績は200万眼を超えています。手術での切開は約3mmという微細なもので、この小さな切開は縫合の必要なく自然に治癒します。そのため、患者さんの眼にかかるストレスや負担は極めて少ないと言えます。
5
痛みのない日帰り手術
手術時間は短く、点眼麻酔が使用されるため、痛みはほとんどありません。手術当日はごろごろとした違和感があるかもしれませんが、多くの方が手術の翌日には視力の回復を実感できます。
6
万が一の際は人工眼内レンズを
取り出すことも可能
ICL治療の大きな特徴の一つは、手術後に問題が生じた場合や視力の変動があった場合、挿入したレンズを取り出すことができる点です。これにより、手術前の状態に戻すことが可能となります。
7
ドライアイを起こしにくい
ICL治療は角膜の表面を削ることなく行われるため、レーシック手術後によく見られるドライアイのリスクが低いとされています。
ICLのデメリット
1
保険適応外
ICLは自由診療であり、保険適用の適用外になるため、全額自己負担となります。ただし、医療費控除の対象になります。
医療費控除について
医療費控除とは、一定の医療費を支払った際に、その金額を所得から差し引いて税金を計算することができる制度のことを指します。
具体的には、年間で支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分が税金から控除されることとなります。この制度のおかげで、ICL治療などの医療費を負担した際も、税金の軽減を受けることが可能となります。
2
レンズ到着まで時間がかかることも
ICL手術では、事前に行われる詳細な検査の結果をもとに、各患者さんの眼の状態に最適なレンズを選択し、発注または特別注文します。もし所要のレンズが国内に在庫されていない場合、海外からの輸入や特別製造の依頼が必要となり、これにより手術までの期間がかかる可能性があります。
3
合併症について
ICL治療は手術時間が短く安全に受けられる手術ですが、外科的な手術ですので合併症のリスクが0というわけではありません。
感染症(眼内炎)
ICL治療は手術時間が短く安全に受けられる手術ですが、極稀に切開部から細菌が侵入し、0.02%の確率で「術後眼内炎」という感染症が発生することが知られています。 当院ではこのリスクを最小限に抑えるため、医師からスタッフまでが手術の際の環境管理に厳格に取り組んでいます。さらに、患者様への術前・術後のケアや注意点についての詳しい指導を行い、安全な手術を実現するための協力をお願いしております。
眼圧上昇
虹彩と水晶体の間にICLを挿入するため、虹彩が角膜側に押され房水の流れが悪くなり、眼圧が高くなることが報告されています。ただしこれは古いICLレンズを使用した時のみです。当院では最新のICLのみ使用しているため、眼圧が上がる可能性はほぼありません。ですが、術後に眼圧が上昇していないかどうかだけは気をつけて確認していきます。
白内障
とても低確率ですが、レンズが水晶体に接触すると白内障を生じます。白内障で視力が低下した場合、白内障手術が必要になる可能性があります。ICLを挿入する際に水晶体に接触するかどうかは、患者さんの眼の状態と術者の技量によります。当院では術前に、白内障を生じるリスクがない眼であることをしっかりと確認した上で手術に臨みます。また、術者の堀内医師は白内障手術に十分な経験を持ち、水晶体と接触する可能性はゼロに近いです。手術である限り合併症が0%とは言えませんが、当院ではほぼゼロに近い状況です。
ハロー・グレア
ICL手術の後、夜や暗い環境での光の見え方に変化が生じることがあります。具体的には、光がぼやけて見える「ハロー」と、眩しい感じがする「グレア」。全く感じることのない方もいらっしゃいますが、もし症状が出現した場合、時間が経つにつれて症状が軽減したり、気にならなくなる方がほとんどです。
結膜下出血
手術時に結膜下に出血を生じることがあります。その場合でも通常1-2週間で改善します。
老眼
40歳くらいから、調節力が弱くなるため手元が見えづらい老眼の症状が出始めます。ICLでは老眼を治療するわけではないので、年齢とともに老眼を自覚してしまいます。その場合は老眼鏡などを使用する形となります。
ICL手術の流れ
ICLの手術方法
点眼麻酔
点眼薬により瞳孔(ひとみ)を大きく開かせ、目薬による麻酔を行います。点眼をさすときに少ししみる感じがありますが、注射による麻酔のような痛みはありません。

角膜切開
耳側の白目と黒目の境目の角膜を約3mm切開します。点眼麻酔を行っているため、ほとんど痛みはありません。

粘弾性物質(ヒアルロン酸)注入
先ほど切開した場所から、粘弾性物質(ヒアルロン酸ナトリウム)と呼ばれる、ゼリー状の物質を眼にいれます。こちらはクッション材の役割を果たし、眼内の組織を守ったり、レンズを入れる際の空間を保持することを目的とします。
ICL挿入
折りたたまれたICLレンズを挿入します。このときにぐっと押されるような感覚がする方が多いです(痛みはありません)。折りたたまれたICLレンズは10秒〜20秒程度でひとりでに広がります。

ICL固定
挿入したICLレンズを、虹彩と水晶体の間に固定します。

粘弾性物質(ヒアルロン酸)除去
3で入れた粘弾性物質(ヒアルロン酸ナトリウム)を除去するための吸引を行い、眼内をきれいに洗浄します。手術後の合併症リスクの一つである、術後眼内炎(手術により眼に細菌が侵入する症状)を防ぐためにもていねいに行います。
ICL手術終了
切開創は眼内圧によって自然に閉鎖し、自然治癒するので縫合することはありません。

ICLの費用
ICL検査費用
術前検査・適応検査費用 |
ICL手術費用
乱視用なし
片眼 | 325,000円(税込) |
両眼 | 650,000円(税込) |
乱視用あり
片眼 | 335,000円(税込) |
両眼 | 670,000円(税込) |
- 術前検査日(手術予約の際)に前金として55,000円いただきます。手術決定後の返金は致しかねます。
- 残りのお支払いは手術当日となります。
- 遠視用ICL、-3D未満の近視用ICLは個人輸入となりますので追加費用が片眼で25,000円かかります。予めご了承ください。
- 両眼手術の場合は、左右同時手術となります。
ICL保証内容
- 手術費用内には、技術料やICLの他に「術後3ヵ月以内の診察・検査費用」を含みます。
- 度数が合わない等の理由でのレンズ入れ替え手術は「術後3ヶ月間は無料」です。
- 保証期間や内容の詳細は当院までお問い合わせくださいませ。
その他注意事項
ICLは自由診療であり、保険適用の適用外になるため、全額自己負担となります。ただし、医療費控除の対象になるため、領収書は大切に保管してください。
医療費控除とは?
医療費控除とは、一定の医療費を支払った際に、その金額を所得から差し引いて税金を計算することができる制度のことを指します。
具体的には、年間で支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分が税金から控除されることとなります。この制度のおかげで、ICL治療などの医療費を負担した際も、税金の軽減を受けることが可能となります。