皆さまは白内障手術に対してどのようなイメージを持っていますか?
白内障という病気は年齢を重ねると誰でも起こり得る病気で、高齢の方では白内障の方がたくさんおられます。
ある程度進行したら手術で治すことが一般的ですので手術をされる方はとても多く、ご自身が白内障手術を検討されている方、身内や知り合いで手術を予定しているという方がたくさんおられると思います。
そんな白内障ですが、
このようなリスクが潜んでいます。
たとえば、近年は白内障を放置していると、認知症になるリスクが高まるという研究結果が出ています。
そのため、「75歳」には白内障について診察を受けていただくことを推奨しています。
皆さまに適切なタイミングで安全に手術を受けて頂くために、
以上を解説していきたいと思います。
白内障とは

白内障は目の水晶体という部分が濁ってくる疾患です。
この水晶体は元々透明な組織なのですが、白内障になると
白内障によって水晶体が白く濁ることでこのような症状が起こります。
白内障の原因

白内障の原因は加齢によるものが一番多いとされており「老人性白内障」と呼ばれます。年代別の発症率では50代で40〜50%程度、80代以上ではほぼ100%の方が発症します。
ただし、白内障はゆっくりと進行しますので、ご自身が白内障だと気づかれる方は少ないです。
例えば、白内障といえば「目が白くなる」というイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、パッと見て分かるくらいに目が白い状態はかなり症状が進行しています。なお、進行の程度には個人差があります。
白内障における加齢以外の原因としては、生まれつきの先天白内障やステロイドによる薬物白内障、打撲による外傷性白内障、糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患に伴うものなどがあります。1)
1)所敬. 現代の眼科学 改訂第12版. 金原出版, 2015 , 219.
白内障の症状は?

白内障では元々透明な組織である水晶体が白く濁ってくることで様々な症状をきたします。
代表的な症状は、霞んで見える(霧視)、まぶしく感じる(羞明)、物が見えにくい(視力低下)、ダブって見える(単眼複視)などが挙げられます。
これらの症状に当てはまる場合は、白内障の可能性があります。白内障が進行するとともに症状は強まっていくことが一般的です。
以前と比べて「見えにくい・霞む・まぶしい」などの症状がある方は白内障の症状が進行していることが予想されますので、早めに眼科受診をされることをおすすめします。

白内障の発症年齢は?
白内障の発症年齢をまとめました。50代で発症し始めて、80代以上ではほぼ100%の方が発症しているとされています。早い場合は40代ごろから発症するケース、先天性で生まれつき発症しているケースもあります。また、外傷や全身疾患に伴う白内障の場合は若年者でも白内障することがあります。
年代別の発症率をみてみると、
が発症しているとされています。

白内障手術とは

白内障手術では白内障によって濁った水晶体を取り除き、その水晶体の代わりとなる眼内レンズ(人工の水晶体)を挿入します。
成人では通常、局所麻酔で行います。
このように思われる方がおられると思いますが、手術の際は麻酔を使用するため痛みは少なく、短時間(当院では5~10分程度)で終わるので、手術後は「もう終わったの?」と笑顔で言われる方も多いです。
また麻酔は目薬で行う点眼麻酔なので、通常の注射での麻酔のような麻酔をかける際の痛みもありません。
白内障はある程度進行したら「手術で治す」ことが一般的ですが、白内障が見つかったら「急いですぐに手術」ということは少なく、基本的には医師や家族・周りの方と相談をして頂きながら、手術の時期を決めていきます。
白内障治療(白内障手術)のメリット
視力の回復

まず一番のメリットは視力がよくなることです。
白内障手術を行うことで視界がはっきりよく見えるようになります。人工の透明な眼内レンズを挿入することで、コントラストの改善、色覚の改善も期待でき、「くっきりと鮮明に」、「色が鮮やかに」見えるようになります。
生活の質の向上
視力が回復することで結果的に生活の質が向上することにもつながります。

手術を終えた方々は、
快適に日常生活を過ごすことができ、趣味も楽しめるようになる方々がたくさんいらっしゃいます。
他の眼疾患を正確に診断できるようになる

白内障の程度が強い場合では、目の奥(眼底)が見えにくいことがあります。眼底が見えにくいということは目の病気があるかを医師が判断しづらい状態です。
白内障手術を受けて頂くことで、眼底の状態を正確に診察でき、白内障以外の眼疾患があった場合にも適切な治療を受けて頂けることにもつながります。
白内障手術は認知症の予防になる

最近の研究では、白内障手術が認知症のリスクを減らすことができると言われています。
私たちの日常生活において、外界からの情報の90%以上は視覚を通じて得られます。
しかし、加齢と共に進行する白内障は、この重要な情報の入り口を徐々に塞ぎ、結果として脳の機能にも影響を及ぼすことがあります。
白内障手術と認知症リスクの関係

白内障手術により、外界からの情報が脳に届きやすくなり、脳の活性化につながると考えられています。
実際に、PLOS ONE誌に掲載された研究では、白内障手術を受けた患者さんの認知症発症リスクが約30%減少することが報告されています。1
また、PubMedに掲載された別の研究では、白内障手術が認知機能の改善に寄与する可能性が示されており、特に認知症患者さんにおいては、うつ状態の改善にも効果があることが報告されています。2
昔は手術の安全性が今以上に確立されていなかったこともあり、「白内障の治療は目が見えにくくなってからでよい」「白内障手術は進行が進んでからでよい」とされることも多かったですが、現在は自覚症状が少なかったとしても、早めに白内障手術を受けることが推奨されています。
白内障手術のデメリット
白内障手術は、短時間で安全に受けられる手術ですが、リスク・デメリットがゼロではありません。
などが挙げられます。それぞれ解説していきます。
眼の手術と言われると受けるのがなんだか怖い

目の手術ですし、怖いと思われる方もたくさんいらっしゃると思いますが、白内障手術はすべての外科手術の中で最も多く行われている非常に安全な手術です。(年間約160万件)
手術前にはしっかりとカウンセリングや、手術に関する説明をさせて頂きますので、ご安心ください。手術後は「すごくよく見える」や「全然怖くなかった」と喜んで頂けることが多いです。
また、白内障は加齢とともに全ての人に起こり得ます。そのため、可能であれば先延ばしにするよりも早めに受けてしまうことをおすすめしています。
メガネが必要になることが多い
白内障手術で使う眼内レンズは基本的には単焦点レンズで、希望された1点の距離のみが眼鏡なしで見えるようになります。この1点をどの距離に合わせるかは手術前に丁寧にカウンセリングさせて頂きます。
希望された距離は裸眼で見える、それ以外の距離は眼鏡を使って頂くという形です。
これは手術により、目の中のレンズ(=水晶体)を人工のレンズ(=眼内レンズ)に取り替えることによって、ピントを合わせる力である調節力がなくなるからです。
ただし、このピントを合わせる力である「調節力」は30代から徐々に低下し、60代になると調節力がない方がほとんどだとされています。いわゆる老眼、老視と呼ばれる状態です。
そのため、60代以上で白内障手術を受けられる方に関しては、もともと老眼で、白内障手術を受ける前から遠くや手元で眼鏡を使用されている方々も多いと思いますので、「術後に眼鏡が必要になる」という点は大きなデメリットとならないことがほとんどです。
逆に、近視が強く、眼鏡やコンタクトがないと何も見えないという方などは、白内障手術を行ったことで眼鏡なしでもはっきりと見えるようになるので、感動される方が多い印象です。
できれば眼鏡なしで見たいという方へ


できれば眼鏡なしで見たいという方には「多焦点眼内レンズ」がおすすめです。
裸眼でいろんな距離にピントを合わせることができるため、単焦点レンズに比べて眼鏡を使うことが少なくなります。
手術後には「裸眼で遠くも近くも見える」「眼鏡を使う頻度が少なくなった」など嬉しいご感想を頂くことも多いです。当院では多焦点眼内レンズも取り扱っています。
費用について

白内障手術費用(片眼・単焦点※保険診療 | |
---|---|
1割負担 | 8,000円(※) |
2割負担 | 18,000円(※) |
3割負担 | 約51,000円 |
なお、多焦点眼内レンズに関しては「選定療養(厚生労働省認可のレンズ)」は保険診療代+レンズ代で受けていただけます。厚生労働省未認可のレンズに関しては手術代、レンズ代ともに自費にて受けていただくことが可能です。
※どちらも医療費控除の対象です。
多焦点眼内レンズについて詳しくは下記のリンクを御覧ください。
高額療養費制度とは
一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が還付される制度があります。当院での支払額に加え、他院の医療費や調剤薬局の支払いの1ヶ月分の合計が対象になります。
※ 限度額は年齢や世帯収入などにより異なります。申請方法につきましては、区役所など窓口にてご確認ください。
手術のリスクと合併症の可能性
白内障手術のリスクとしては、「手術中の状況によっては手術が1度で終わらない」や「術後の合併症の可能性」などが挙げられますが、術者の技量や機械によって、リスクを下げることができます。
当院では熟練した術者のみが執刀し、術中に眼圧が上がりにくい「センチュリオンアクティブセントリー」という特別な機械を使用していますので、低リスクでの安全な手術が可能です。

そのため、当院では、上記したリスクが起こることはほとんどありません。
眼内レンズはいつまで持つの?
白内障手術で挿入した眼内レンズは半永久的に使えます。特別な理由がない限り、レンズを交換することはほとんどありません。
調整等のメンテナンスも必要ありませんが、手術の後に、水晶体後嚢(眼内レンズを入れるために残したもの)が濁ってくる「後発白内障」を生じる場合がありますが、5分程度でできるレーザーを用いた処置で治療することができます。
「知り合いが白内障手術をしたあと、また白内障になって手術を受けた」という話を聞かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、、ほとんどの場合、この後発白内障のことです。
高齢者が白内障手術を受ける際のリスクについて
白内障手術の際には、「手術を受ける年齢」がリスクにつながることがあります。高齢の方は「年齢が上がる」ことが手術時のリスクを高めることにつながることを知っておいて頂きたいです。
白内障が進みすぎた場合、手術難易度があがる場合がある
一般的に白内障は時間経過とともに進行していきます。
進みすぎた白内障では、「水晶体が硬くなっている」、「水晶体の支えが弱くなっている」など手術をする際の難易度が上がることがあります。
白内障手術を先延ばしにすればするほど、手術の難易度が上がり手術のリスクが高まるため、なるべく早い眼科への受診をおすすめします。
全身症状の変化によるリスク
年齢が上がってくると全身状態も変わってきます。
以前に比べて足腰が悪くなり動きにくくなったり、体調が優れない日が出てきたり。また白内障で見えにくいことが原因で、転倒につながるケースもあります。
例えばですが、万が一寝たきりの状態になってしまえば白内障手術を受けることが難しくなります。

全身状態の変化という点からも「年齢が上がる」ことがリスクになると知って頂き、身体に問題がないと感じている間に白内障手術を受けて頂くことを強くおすすめしています。
認知症のリスク
先ほども申し上げましたが、白内障手術によって認知症のリスクが軽減されることが分かってきました。
白内障を放置していると、目から入る情報が制限されるため、認知機能に悪影響を及ぼすとされています。

そのため、「まだ白内障でそこまで困っていない」という方でも、認知症予防のために早めの白内障手術をおすすめしています。
以上のような理由から、75歳までに白内障手術を受けていただくことを推奨しています。
75歳を過ぎても白内障手術を受けなければどうなるのか?
白内障を放置することで命に関わる、ということはありません。
80歳を過ぎてから白内障手術を受けられる方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、上記でも述べたように、白内障で目が見えにくくなることによって「転倒による怪我」「認知症の進行」などのリスクが高くなります。また、白内障をそのままにしておくことで、日々の仕事や趣味に支障をきたす場合もあります。
また、白内障が進行してしまうと手術の難易度が上がったり、年齢を重ねることでご自身で術前・術後の点眼が難しくなる場合もあります。
そのため、まだ見えていると感じていたとしても、遅くとも75歳には白内障手術を受けていただきたいと考えています。もちろん、60代で白内障手術を受けられる方もたくさんいらっしゃいます。
まとめ
白内障手術は、短時間で安全に受けられる手術ですが、高齢になればなるほど手術のリスクは高まります。また、白内障を放置することで、日常生活に支障が出るだけではなく思わぬ事故・病気につながることも。
適切な時期に手術を受けて頂くためにも眼科への定期受診は非常に重要です。
また40歳以上では20人に1人が緑内障であると言われていますので、白内障だけでなく、目の病気を早期発見するためにも定期的な眼科受診をするよう心がけて下さい。
当法人は経堂こうづき眼科と王子さくら眼科、2院展開しておりますので、ご来院しやすい方にお越しください。
経堂こうづき眼科
〒156-0052 東京都世田谷区経堂2-1-33 経堂コルティ 2F
小田急線経堂駅すぐショッピングモール内
TEL:03-5799-7276
診療受付時間: 午前10:00-13:00 午後15:00-18:30
※木曜日休診、日曜祝日18:00まで
土日祝も診療を行っております。(木曜休診日)
経堂白内障手術クリニック
手術は以下のクリニックで行います。経堂こうづき眼科から徒歩30秒です。
経堂こうづき眼科予約について
白内障手術の予約相談を受け付けております。よろしければご家族の方も一緒にご来院ください。 webでの日程が合わない場合、予約なしで直接ご来院ください。
王子さくら眼科
〒114-0002
東京都北区王子1丁目10-17 ヒューリック王子ビル 5F
京浜東北線/東京メトロ南北線「王子駅」北口徒歩30秒 みずほ銀行の上
TEL:03-6903-2663
診療時間: 午前9:30〜13:00 午後15:00〜18:30
休診日:日曜日

王子さくら眼科予約について
webでのご予約も承っております。
web予約内での日程が合わない場合、予約なしで直接ご来院ください。
参考文献・参考資料
- Lin MY, Gutierrez PR, Stone KL, et al. Vision impairment and combined vision and hearing impairment predict cognitive and functional decline in older women. PLOS ONE. 2004; https://journals.plos.org/plosone/article/file?type=printable&id=10.1371/journal.pone.0192677 ↩︎
- Lee CS, Gibbons LE, Lee AY, et al. Association of Cataract Surgery With Lower Risk of Developing Dementia Among Older Adults. JAMA Intern Med. 2021; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34870676/ ↩︎