白内障手術では、白内障によって濁った水晶体を取り除いて人工の透明な眼内レンズを挿入します。この眼内レンズには種類があり、手術前にどの眼内レンズを使用するかを決めておく必要があります。
眼内レンズには「単焦点眼内レンズ」、「多焦点眼内レンズ」があり、そして多焦点眼内レンズは年々進化をしており、今では様々な種類の多焦点レンズが存在します。
実際に手術を検討されている方の中にはレンズの選択で悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、
こういった内容をまとめていきます。単焦点レンズ、多焦点レンズの特徴を知って頂き、ご自身にとって最適な眼内レンズ選択の一助になれば幸いです。
白内障手術とは

白内障は元々透明な組織である水晶体が白く濁ってくる病気です。ある程度進行した白内障は「手術で治す」ことが一般的です。白内障手術では濁った水晶体を取り除き、その水晶体の代わりとなる透明な眼内レンズ(人工の水晶体)を挿入します。
白内障手術を検討されている方の中には、
このように思われる方がおられると思いますが、手術の際は目薬での点眼麻酔を使用するため痛みは少なく、短時間(当院では5〜10分程度)で終わります。
点眼麻酔なので通常の注射での麻酔のような麻酔をかける際の痛みもありません。
また手術中は目を開けたまま行うためメスなどが見えて怖いのでは?と思われる方がおられるかもしれませんが、手術中は目に光を当てているのでメスが見えることはなく「視界がまぶしい」くらいですのでご安心ください。
手術後は「もう終わったの?」、「思ったより怖くなかった」というご感想を頂くことも多いです。
白内障はある程度進行したら、手術で治すことが一般的ですが、白内障が見つかったら「急いですぐに手術」ということは少ないです。なぜならば、白内障は「放置していたら命に関わる!」だとか「見つかったらすぐに治療しないと手遅れになってしまう!」という深刻な事態になる、というものではないからです。
それでも、白内障手術は早めに受けることで認知症予防になったり、将来的にQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を保つことに繋がります。
詳しくは以下のリンクをご参照ください。

基本的には医師とのカウンセリングや家族・周りの方と相談をして頂きながら、手術を受ける時期を決めていきます。
白内障手術の平均年齢については以下の記事をご参考ください。

眼内レンズの種類と特徴
白内障は、目の中にある「水晶体」という、カメラでいうところのレンズの役割を果たしている部分が濁ってしまう病気だとお話しました。
そこで、この「水晶体」を人体に安全な「人工のレンズ」に取り替えるのですが、この人工眼内レンズには種類があります。
「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」です。
どちらのレンズにするのか、というのは、最終的に患者さん自身に選択して頂くことになります。そのため、どちらのレンズを選択するか悩まれているという方も多いのではないでしょうか。
まずはそれぞれの特徴についてまとめていきます。
単焦点眼内レンズ
基本的には保険適応のある「単焦点眼内レンズ」を選択される方が多いです。
単焦点眼内レンズはその言葉の通りピントが合う距離が1つという形になります。希望された1点の距離のみが眼鏡なしで見えるようになります。
この1点を遠くまたは近くのどちらを希望されるかは人によって様々ですので、手術前に丁寧にカウンセリングさせて頂き、希望の距離を一緒に決定します。
【単焦点眼内レンズの特徴】
希望した距離は裸眼で見える、それ以外の距離は眼鏡を使って頂く
これが単焦点眼内レンズの特徴になります。
- 遠くを希望された方:中間距離、手元は眼鏡が必要。
- 近くを希望された方:遠く、中間距離は眼鏡が必要。

当院では、乱視を矯正することができるトーリック単焦点眼内レンズ(乱視用)の取り扱いもあります。
多焦点眼内レンズ
遠くも近くもなるべくメガネを使用せずに見たい!という方には「多焦点眼内レンズ」がおすすめです。
多焦点眼内レンズを選択することで、メガネの使用機会を減らすことが期待できます。

【単焦点眼内レンズの特徴】
・裸眼で遠くも近くも見えるようになる。
・眼鏡の使用機会を減らすことが期待できる。
手術後は裸眼でいろんな距離にピントを合わせることができるため、手術を終えた方々からは「裸眼で遠くも近くも見える」、「眼鏡がいらなくなった」など嬉しいご感想を頂くことも多いです。
当院で主に取り扱う多焦点眼内レンズは以下の5種類です。もちろん、これ以外にもご希望がございましたらご相談を承っております。
名前 | 構造 | 近方 | 中間 | 遠方 | ハロー・グレア | 向いている人 |
---|---|---|---|---|---|---|
テクニスシナジーTECNIS Synergy | 回折型連続焦点型 | ◎(約35cm) | ◎ | ◎ | あり | 遠くから手元までしっかり見たい方 夜間の運転が少ない方 |
クラレオンパンオプティクスClareonPanOptixTrifocal | 回折型3焦点型 | 〇(約40cm) | 〇 | ◎ | やや少ない | 近くもそこそこ見えたい方 夜間の運転が少しある方 |
クラレオンビビティClareon Vivity | 焦点深度拡張型 | △(約40cm) | ◎(約70cm) | ◎ | かなり少ない | 仕事などで毎日の様に夜間車を運転し、手元はそこまで見えなくても良い方 |
ファインビジョンHPFINEVISION HP | 回折型3焦点型 | ◎(約35cm) | 〇 | 〇 | あり | 遠くから手元までしっかり見たい方 夜間の運転が少ない方 |
インテンシティIntensity | 回折型5焦点型 | ◯ | ◎ | ◎ | 少ない | 最も最新のレンズを希望する方 なるべく眼鏡なしで生活したい方 |
多焦点眼内レンズはそれぞれに特徴があるため、しっかりとカウンセリングを行いご自身の希望や生活スタイルに合ったレンズを一緒に選択していきます。
多焦点眼内レンズの種類や特徴について、更に詳しくは以下をご参照ください。
多焦点眼内レンズのメリットとデメリット
多焦点眼内レンズを選択する上では、メリットとデメリットをしっかり理解しておくことがとても大切です。これらを知っておくことが最適なレンズ選択につながっていきます。
多焦点眼内レンズのメリット
遠くも近くもよく見える

手術後に裸眼で遠くも近くも見えるようになることが最大のメリットです。
「元々、若い時は遠くも近くも裸眼で見えていた人」
「眼鏡を使う生活から開放されたい人」
このような方は、多焦点眼内レンズを選択することでこれまでよりも裸眼で日常生活を送れる時間が多くなることが期待できます。
眼鏡を使うことが少なくなる

多焦点眼内レンズを選択することで、裸眼で生活できることが増えるため、通常の単焦点眼内レンズを選択するよりも眼鏡を使うことが圧倒的に少なくなります。
眼鏡を使う生活からなるべく開放されたいという方は多焦点眼内レンズを選択することで眼鏡の使用頻度を減らすことができます。
レンズの選択肢が豊富である

通常の単焦点眼内レンズとは異なり、多焦点眼内レンズには様々な種類があり、それぞれ特徴や強みが異なります。しっかりとカウンセリングを行い、ご自身の希望や生活スタイルに合わせて医師と相談をしながらレンズの種類を選択していきます。
多焦点眼内レンズのデメリット
多焦点眼内レンズには上記のメリットに加えて、デメリットもあります。レンズ選択をされる際にはこのデメリットもしっかり理解した上で選択されることが理想的です。
夜間のハロー・グレア現象

夜間に光を見た際に、ぼやけてにじむ(ハロー現象)、ギラギラとまぶしい(グレア現象)という症状が起こる場合があり、「ハロー・グレア現象」と呼ばれます。
「夜間の運転が多い人」や「夜間に光の下で行われる土木工事に携わる人」は注意が必要です。
多焦点眼内レンズによっては、このハロー・グレア現象が起こりにくいレンズがありますので、カウンセリングで夜間の運転や作業がないかなどをお聞きします。
コントラスト感度の低下

コントラストとは、物の輪郭、色の濃淡、明るさの明暗の違いなどで表現されることが多いですが、「くっきりと鮮明に見える」かに関わります。
多焦点眼内レンズではコントラスト感度が低下するとされており、通常の単焦点眼内レンズの方がコントラストの面では優るとされています。
多焦点眼内レンズのデメリットはどのように考えていく?
ハロー・グレア現象やコントラスト感度について不安に思われた方がおられると思いますが、時間経過とともに慣れていく方も多くいらっしゃいます。
多焦点眼内レンズの最大のメリットは、「裸眼で日常生活が送れる」ようになることで、手術後は「眼鏡がいらなくなった」などの嬉しいご感想を頂くことが多いです。
ご自身の生活スタイルや個性などによっても感じ方がかなり違って行きますので、信頼できる医師と共に相談することが最も重要です。
多焦点眼内レンズに向いている人・向いていない人

多焦点眼内レンズにはメリットとデメリットがあるため、人によっては向かないケースもあります。
皆さまに最適な眼内レンズの選択をして頂くために例を出しながら「多焦点眼内レンズに向いている人・向いていない人」についてまとめていきます。
多焦点眼内レンズに向いている人
まずは多焦点眼内レンズに向いていると考えられる人について解説していきます。
裸眼で快適に生活をしたい人

多焦点眼内レンズは、遠くも近くも裸眼で見えるようになることが最大のメリットです。
そのため「裸眼で日常生活を送りたい」、「眼鏡やコンタクトレンズなしで生活をしたい」という希望をお持ちの方には、多焦点眼内レンズはおすすめです。多焦点眼内レンズを選択することで、術後は裸眼で遠くも近くも見えるようになることが期待できます。
眼鏡やコンタクトレンズでの生活から開放されたい人

上記したように、多焦点眼内レンズによって裸眼で日常生活を送ることが期待できますので、「眼鏡やコンタクトレンズでの生活から開放されたい」という方にも向いています。
夜間に車の運転が少ない人

デメリットで挙げたハロー・グレア現象は夜間の光で起こるとされています。普段運転をされない方、夜間の運転が少ない方はハロー・グレア現象の影響を受ける可能性が低いので、多焦点眼内レンズが向いていると言えます。
手元の細かい作業が少ない人

裸眼で遠くも近くも見えることが多焦点眼内レンズのメリットですが、手元の小さい文字や細かい物にはピントが合いにくいケースもあります。
手元の細かい作業を日常的にされる方は近用眼鏡(老眼鏡)が必要となる場合があり注意が必要です。
手元の細かい作業が少ない方は、多焦点眼内レンズによって眼鏡なしでの快適な日常生活が期待できます。
多焦点眼内レンズに向かない人
それでは次に、多焦点眼内レンズに向かない人について解説していきます。
眼鏡をかける生活に抵抗がない人

多焦点レンズの最大のメリットは、裸眼で遠くも近くも見えることなので、眼鏡をかけることに抵抗がない方は単焦点眼内レンズでもよいと言えます。
今まで眼鏡をかけることに慣れており、今後も抵抗がないという方は単焦点眼内レンズを選ばれるケースが多いです。
白内障以外に目の病気がある人

進行した緑内障、糖尿病網膜症や黄斑変性症などの網膜疾患、角膜不正乱視がある場合では白内障手術を行ったとしても術後に視力が回復しないことがあります。
医師が見え方に改善が見込めないと判断した場合は多焦点眼内レンズを勧めることができないケースがあります。
夜間に車の運転がある、屋外での作業がある人

デメリットで挙げた「ハロー・グレア現象」は夜間の光で起こるとされています。
例)
夜間の運転が多い場合:対向車のヘッドライトがにじむ、まぶしく感じる
夜間に土木工事などで灯の下での作業が長時間ある方:運転時と同様の症状が起こる可能性がある
このような場合は注意が必要です。夜間の運転がある場合などでは多焦点レンズが向かないことがあります。多焦点眼内レンズの種類によってはこのハロー・グレア現象が起こりにくいとされているものがありますので、気になる方は医師に相談をされてみて下さい。
くっきり・はっきり見たい人

「くっきり鮮明に」というコントラストの観点では単焦点眼内レンズの方が優るとされています。
このコントラストをすごく重視したいという方は、多焦点眼内レンズは向いておらず、単焦点眼内レンズを選択する方がよいと言えます。
性格的に、細かいことが気になる人

多焦点眼内レンズでは、脳が見え方に慣れるまでに時間がかかったり(脳内適応)、ハロー・グレア現象やコントラスト感度が低下する場合があります。
そのため、性格的に細かいことが気になったり、神経質な人には多焦点眼内レンズは向かないとされており、ご自身の性格面も踏まえてレンズ選択をしていくことも大切です。
手元の細かい作業を好む人

多焦点レンズではありますが、手元の細かい文字などでは近用眼鏡(老眼鏡)が必要になるケースがあります。そのため、手元の細かい作業を好む方、長時間される方は多焦点レンズが向かないケースがあります。
例)
編み物や針仕事をすることが多い
株価のような細かい文字を長時間チェックする
ご高齢の方
80歳以上など、ご高齢の方では、以下の点から単焦点眼内レンズをおすすめするケースが多いです。
このような観点からご高齢の方は単焦点眼内レンズを選択される方が多いです。
ただし、これらはあくまで一般例ですので、多焦点眼内レンズに興味をお持ちの方は眼科を受診して医師にいろいろ相談をされてみて下さい。
まとめ
今回は多焦点眼内レンズを中心にまとめました。
白内障手術において、どのレンズを選択するかは今後の見え方を左右することにつながります。
眼内レンズを選ぶ際には、それぞれの特徴やメリット・デメリットを知って頂いたうえで、ご自身の生活スタイル・性格に合わせてレンズ選択をしていくことが最適なレンズ選択へつながっていきます。
ご自身が「信頼できる!」と感じたクリニックでカウンセリングを受けることが重要ですので、レンズ選択で迷われている方や白内障手術を検討されている方は信頼できる医師のもとでいろいろと相談をされてみて下さい。
当法人は経堂こうづき眼科と王子さくら眼科、2院展開しておりますので、ご来院しやすい方にお越しください。
経堂こうづき眼科
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