加齢黄斑変性とは、加齢の影響で網膜の中心にある黄斑と呼ばれる部分が変化し、ものが歪んで見えたり、中央が見えづらくなったり、視力が下がったりする病気です。読み方は加齢黄斑変性(かれいおいうはんへんせい)です。英語でAge-related Macular Degeneration(AMD)と言います。
加齢黄斑変性は欧米における成人の失明原因の第一位です。日本でも失明原因の四位となっています。以前は日本人に発症する割合は比較的低かったのですが、近年増加しています。
日本人の加齢黄斑変性が増えた理由について、平均寿命が高くなったことや、肉類を食べるようになったなど生活の欧米化が関係しているとされています。
片目のみに起こることが多い病気ですが、片目に発症すると数年以内にもう片目に発症することがあります。
治療するのが難しい病気とされていましたが、近年では治療方法が進歩し、早期から治療を行えば視力の改善や悪化を防ぐことが可能になりました。
加齢にともなって起こるため、50歳以上の人に多く起こります。60代、70代と年齢が上がるにつれて加齢黄斑変性の割合も高くなります。75歳以上の人の約30%が加齢黄斑変性を発症します。
若い人でも歪んで見えたりすることはあり、その場合は中心性漿液性脈絡網膜症などの病気があります。
また、男性に多く、女性の約3倍程度です。
他にも喫煙、肥満、日光を浴びること(紫外線)、パソコンやテレビ、スマートフォンなどのブルーライトもリスクを高める原因とされています。肉中心の食生活も原因のひとつとされます。
特に煙草は加齢黄斑変性の発症リスクを高めると言われており、喫煙による酸化ストレスが目に蓄積することで、炎症を引き起こすとされています。
まず、加齢黄斑変性には二種類の型あります。滲出型と萎縮型です。
滲出型の加齢黄斑変性では、網膜の下や、網膜の一番下の層である網膜色素上皮層と呼ばれる場所に新生血管と呼ばれる新しい血管が出ます。この新生血管と呼ばれる新しい血管は非常にもろく、出来るとすぐに破れて出血の原因になります。
網膜の下にできた新生血管が破れると、網膜剥離や網膜浮腫が起こることがあります。そうなると視細胞と呼ばれる「見る力」に必要な細胞に栄養がいかなくなってしまい、視力が低下します。
この出血が硝子体に入り込むと、ほとんど見えなくなります。
加齢黄斑変性は目の中でも特に「黄斑」と呼ばれる部位にそれが起こります。
「黄斑」は、視界の中心にあたり、目の中でも最も視力が良い部分になります。そのため、加齢黄斑変性になると、視界の中心が暗くなったり、ゆがんで見えたり、視力が落ちてしまいます。
日本では滲出型の割合が高いです。
萎縮型の黄斑変性では、その名の通り網膜の中心にある「黄斑」が加齢とともに萎縮します。新生血管の出現はありません。
症状の進行は比較的ゆっくりのため、突然目が見えにくくなるということは少ないです。
ただし、中心窩と呼ばれる部分に病変が及ぶと、視力低下に繋がります。
萎縮型から滲出型に移行することもあります。
視界の中心が見づらくなりますが、何も見えなくなるということはありません。目の中心に水がたまって浮腫むことで視界がゆがんだり、見づらくなることがあります。
最初は片目だけに発症する人が多いため気づかない人も多い病気です。また、年齢のせいにしてそのままにしてしまう人もいます。
加齢黄斑変性を長く放置するほど治療は難しくなります。
早期発見・早期治療が加齢黄斑変性を治療するために重要です。
下記のように見えたり、見え方に違和感がある場合は早めに眼科へお越しください。チェック用紙を印刷していただき、それに見え方を書き込んで頂いた上でお持ちいただきますとよりスムーズに診察が行なえます。
滲出型に対して主に治療を行います。新生血管を消退させ、新たな新生血管を作らせないようにすることで黄斑の機能を維持・改善します。
硝子体注射(抗VEGF薬)を硝子体に注射します。
注射と言われると怖いと感じられるかもしれませんが、点眼麻酔を行うため痛みはありません。
注射の日の前後には抗菌薬を点眼していただく必要があります。
まず1ヶ月に一度のペースで3回注射を行います。その後、眼底検査やOCTによる経過観察を行いながら、症状が安定するまで2〜3ヶ月に一度の注射を行います。
定期的な硝子体注射を行うことで、新たな新生血管を作らせないようにすることができます。
他にも、ステロイド剤の注射も選択肢のひとつとされることがあります。
詳しくは以下のリンクをご覧ください。
新生血管に集まる性質を持つ薬剤を体内に点滴しながら、弱いレーザーを当てて新生血管を閉塞します。弱いレーザーですので、新生血管以外の組織には影響しないのがメリットです。定期的な施行が必要です。
デメリットとして、この薬剤を使用すると光に敏感になりますので、施術後しばらくは光刺激に対する対策を取らなければなりません。
がん治療にも使用される療法です。
硝子体出血が起こった場合、硝子体手術を行うことがあります。
抗酸化作用のあるビタミンC・E、亜鉛、ルテインなどを一定量組み合わせたサプリメントが有効とされています。
もちろん日々の食事からそれらの栄養素を摂ることも有効です。ルテインやビタミン類は緑黄色野菜に豊富に含まれます。
その他、禁煙や食生活の見直しなど生活習慣の改善を行うなどの対策を行うことで黄斑変性の改善と予防を行います。
紫外線を防ぐために屋外ではUVカット機能のあるサングラスやメガネをかけたり、テレビやパソコン、スマホを使用する場合にブルーライトカットのメガネをかけるのも対策になります。
萎縮型の場合も、滲出型にならないように予防と経過観察を行います。