糖尿病は、長期にわたって血糖値が高い状態が続くと、さまざまな合併症を引き起こすことが知られています。
その中でも特に注意が必要なのが、「糖尿病網膜症」です。
糖尿病網膜症は、糖尿病による高血糖が網膜にダメージを与え、最悪の場合、失明に至ることがある病気です。
この記事では、糖尿病網膜症の症状や見え方の変化、治療法について解説し、糖尿病網膜症で失明しないために知っておくべき情報を提供します。
糖尿病患者の方や、家族・友人に糖尿病患者がいる方はもちろん、糖尿病予備軍の方にも役立つ情報をお届けします。
ぜひ参考にして、糖尿病網膜症の予防や早期発見・治療に役立ててください。
下記youtube動画では年間3万人以上の患者を診察している院長の上月が、対談形式でわかりやすく説明しておりますのでぜひ合わせてご覧ください。
糖尿病網膜症について
糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症(腎症、神経障害、網膜症)のうちの1つで、日本における中途失明原因の第2位の病気です。1)
糖尿病とは
糖尿病は、血糖(血液中のブドウ糖)の調節がうまくいかなくなる代謝の病気です。
通常、血糖値は、インスリンというホルモンが働くことで適切な範囲に保たれます。
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む役割を果たし、エネルギーとして利用されます。
しかし、糖尿病では、インスリンの働きが十分でないため、血糖値が上昇し、長期的にさまざまな合併症を引き起こすことがあります。
糖尿病には主に2つのタイプがあります。
1型糖尿病
1型糖尿病は、主に若い人に発症することが多く、自己免疫疾患として分類されます。
このタイプでは、膵臓のインスリン産生細胞が破壊され、インスリンがほとんどまたは全く分泌されなくなります。
1型糖尿病糖尿病患者はインスリン注射やインスリンポンプを使用して、インスリン補充治療を行います。
2型糖尿病
2型糖尿病は、成人で発症することが多く、肥満や運動不足、遺伝的要素などが原因でインスリンの働きが低下します。これにより、細胞がインスリンに対して抵抗性を持ち、血糖値が上昇します。
2型糖尿病の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法などが含まれます。症状が進行すると、インスリン注射が必要になることもあります。
糖尿病の予防や管理には、適切な食事、運動、体重管理、定期的な健康診断が重要です。
これらの対策により、糖尿病のリスクを減らすことができ、合併症の発症を防ぐことができます。
糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症(Diabetic retinopathy)は、糖尿病が引き起こす目の病気で、糖尿病患者の視力低下や失明の主要な原因となります。
糖尿病が長期間続くと、網膜(目の奥にある光を感知する組織)の微細な血管が損傷を受けることがあります。
これにより、血管が漏れたり、新しい血管が異常に発生したりします。
糖尿病網膜症は少しずつ進行していくのですが、症状がかなり進行するまで、自覚症状がないことが多い病気です。
症状がないからといって放置をしていると、「急に見えなくなった」、「目の前が真っ暗になった」というケースもあります。
糖尿病網膜症の進行と分類 – 症状と見え方
糖尿病網膜症は、糖尿病を発症して5年をめどに発症し、10年〜15年では50%以上が発症するとされています。
初期-単純糖尿病網膜症
初期の状態で、網膜の毛細血管が閉塞することで、血管から血液が漏れたり(点状出血)、血液中のたんぱく質や脂質が沈着したり(硬性白斑)します。
網膜にむくみが出ることもあります(網膜浮腫)。
初期の段階で、網膜症を悪化させないことがすごく大切で、内科での血糖コントロールや網膜の血液循環を改善する内服薬の服用などを行っていきます。
症状、見え方
この段階では、自覚的症状がないことがほとんどです。網膜の黄斑部(視力に重要な部分)に浮腫が生じた場合には視力低下を自覚することがあります。
中期-増殖前糖尿病網膜症
単純糖尿病網膜症がさらに悪化したもので、網膜が虚血状態になり、軟性白斑(綿花状のしみ)や網膜内細小血管異常などがみられます。
糖尿病網膜症の段階としては中期の状態です。
必要に応じてレーザー光凝固を行うことで、悪化を予防します。黄斑のむくみがある場合は、抗VEGF薬注射やステロイド薬注射による薬物療法を行います。
症状、見え方
糖尿病網膜症の怖いところなのですが、この中期の段階でも自覚症状がないことが多いです。
単純糖尿病網膜症と同様に網膜の黄斑部に浮腫が生じた場合には視力低下を自覚することがあります。
末期 -増殖糖尿病網膜症
さらに進行すると、増殖糖尿病網膜症となり、急激な視力低下をきたすことがあります。これは末期の状態です。
網膜の虚血状態が続くことで、酸素不足となり、それを補おうと、新しい血管(新生血管)が増殖していきます。
しかし、この新生血管は本来は存在することのない悪い血管です。
非常に脆いため、破れやすく、硝子体出血を引き起こします。
また、網膜上で増殖した組織の膜(増殖膜)が網膜を引っ張ることで、牽引性網膜剥離を引き起こすこともあります。
さらに、新生血管が虹彩・隅角(目の前側)まで伸びてくると、「血管新生緑内障」を併発し、失明のリスクが高まります。
黄斑部(網膜の中心)を除く網膜全体にレーザー治療(汎網膜光凝固術)を行ったり、硝子体出血や網膜剝離では硝子体手術が必要となる場合があります。
症状、見え方
硝子体出血では、急激な視力低下をきたします。
網膜剝離では、視野障害(視界で見えない部分が生じる)や視力低下を生じます。
また、この段階では、視力に重要な網膜の構造が乱れていることも多く、それが原因で継続的な視力低下をきたすケースもあります。
糖尿病網膜症の検査
視力検査
視機能を評価するための検査です。環の切れ目の方向を答えてもらい、正答できた切れ目の細かさによって、視力値を評価します。
屈折検査
目の度数(屈折度)を調べる検査です。遠視、近視、乱視の程度を評価します。
眼圧測定
眼圧(目の形状を維持するための一定の圧力)を測定します。
細隙灯顕微鏡検査
主に前眼部(角膜、結膜、前房水、虹彩、水晶体等)を観察します。特殊なレンズを用いることで後極部(硝子体、網膜等)まで観察することができます。
眼底検査
眼球の奥にある眼底を観察します。網膜や視神経の状態を観察します。
光干渉断層計(OCT)
網膜や脈絡膜の断面像を撮影します。非侵襲的に短時間で撮影することができます。
糖尿病網膜症の治療法
血糖コントロール
内科と連携して治療をしていきます。
まずは「食生活の改善(食事療法)」と「運動療法」を行い、それでも改善が難しい場合は、飲み薬や注射による薬物療法が行われます。
レーザー光凝固術
新生血管の発生を防ぐために、酸素不足の状態にある網膜にレーザーを照射します。
散瞳後、点眼麻酔をして、レーザー治療用のコンタクトレンズを装着して行います。
1回あたり10〜15分程度で、広範囲にレーザー治療を行う場合(汎網膜光凝固術)は、日を空けて数回に分けて行うこともあります。
抗VEGF薬
糖尿病網膜症では、VEGF(血管内皮増殖因子)という物質が発生することで、血管透過性が亢進し、黄斑浮腫を生じます。
黄斑浮腫の改善を目的として、VEGFの働きを抑える薬(抗VEGF薬)を眼内に注射します。
硝子体手術
重度の硝子体出血や再発性の硝子体出血、牽引性網膜剝離を生じた場合には、手術が必要になります。
糖尿病網膜症に対する硝子体手術は、他の疾患に比べ最も難易度が高いとされています。
硝子体手術を行っている病院でも糖尿病網膜症の場合には紹介になることも多いです。
当院では、糖尿病網膜症の硝子体手術が必要と判断した場合、糖尿病網膜症硝子体手術に対応し、信頼出来る術者がいる病院に紹介させて頂いております。
糖尿病網膜症は進行すると失明につながる怖い病気なのです。
初期の段階で、悪化しないように予防をしていくことが大切です。
糖尿病網膜症の予防
糖尿病を悪化させないこと-健康的なライフスタイルの維持
健康的な食事と適度な運動が大切です。
食事面では
など肥満にならないように努めます。
運動面では、
など可能な範囲内での適度な運動を心掛けて下さい。
糖尿病の適切な管理
一度、糖尿病と診断をされたら内科で治療を行い、血糖コントロールをすることが大切です。
治療法や受診の間隔などは内科医と相談をし、必ず定期的に受診をするようにして下さい。
定期的な眼科検診
糖尿病の方は、眼科での眼底検査も大切です。「糖尿病網膜症」を発症していないかなど診察します。
糖尿病患者の方は、眼の症状の有無に関わらず定期的な眼科での検診が必要となりますので、担当医の指示に沿って受診をするようにして下さい。
まとめ-糖尿病網膜症の早期発見と治療が失明予防の鍵
糖尿病網膜症は失明につながる怖い病気です。
症状がかなり進行するまで自覚症状が出ないことも多く、糖尿病を長い間放置して、急に見えなくなったというケースもしばしばあります。
怖い病気ですが、早期発見・早期治療を行うことで、症状の悪化を防ぐことができますので、一度、糖尿病と診断されたら、早めに必ず眼科を受診して、眼科医の診察を受けるようにして下さい。
医療法人社団 慶月会では、熟練の医師による糖尿病網膜症の治療を行っております。
経堂こうづき眼科と王子さくら眼科、2院展開しておりますので、ご来院しやすい方にお越しください。
経堂こうづき眼科
※木曜日休診、日曜祝日18:00まで
土日祝も診療を行っております。(木曜休診日)
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