白内障手術を検討されている方の多くは、「手術さえすれば視力が回復する」と考えがちです。しかし、手術の成功には、実は術前の検査が欠かせません。
術前検査では、白内障以外の目の病気の有無を確認し、最適な眼内レンズの度数を決定します。今回は、白内障手術の術前検査について詳しく解説し、安心して手術を受けるためのポイントをお伝えします。
なぜ白内障手術前に術前検査を行うの?
白内障手術において最も重要なのは、眼内レンズの度数を決めることです。
手術の成功は、この度数の正確な測定に大きく依存します。そのために、術前には以下のような検査を行います。
白内障手術前に行う重要な検査
1. 白内障以外の病気の有無を確認
白内障手術を受ける前に、目の奥に他の病気がないかを確認します。これは、手術後の視力回復に大きく影響するためです。
確認する主な病気
- 加齢黄斑変性:視野の中心がゆがんだり見えにくくなる病気
- 網膜前膜(黄斑前膜):視界が歪んで見える原因になる
- 緑内障:視野が狭くなり、放置すると失明のリスクがある
- 網膜静脈閉塞症:目の血管が詰まることで視力低下を引き起こす病気
これらの病気がある場合、白内障手術をしても期待通りの視力が得られない可能性があります。術前検査でしっかりとチェックすることで、手術後の見え方を正確に予測できます。
2. 角膜内皮細胞の状態を確認

角膜内皮細胞は、角膜の透明性を保つ重要な細胞です。白内障手術の際に使用する超音波が角膜内皮細胞にダメージを与える可能性があるため、事前に細胞数を測定してリスクを評価します。
上記の「スペキュラーマイクロスコープ」という機械で検査を行います。検査は空気が出たりまぶしかったりするものではなく、機械に顔を乗せて光を眺めている間に角膜の写真を撮るため、比較的早く終わります。(ただし、白内障手術手術直後など、角膜がむくんでいる場合は写真が撮りづらく少し時間をいただくことがあります)
安全な角膜内皮細胞数の目安
- 正常値:2000~3000個/mm²
- 1500個/mm²以下:慎重な対応が必要
- 1000個/mm²以下:手術リスクが高く、場合によっては見送り
最近の手術機器の進化により、角膜内皮細胞へのダメージは大幅に減少していますが、細胞数が極端に少ない場合は慎重な判断が求められます。
3. 眼内レンズの度数を決定するための検査
白内障手術では、水晶体の代わりに眼内レンズを挿入します。このレンズの度数を正確に決定することが、手術の成功に直結します。
眼内レンズの度数を決める主な検査
- 角膜曲率:角膜のカーブの状態を測定
- 眼軸長(目の長さ):目の奥行きを測定
- 屈折度数:目の屈折力を評価
近年、眼内レンズの度数を計算する方法が進化しており、より正確な視力予測が可能になっています。特に「バレット式」という最新の計算式を用いることで、高い精度でレンズの度数を決定できます。

マルチファンクションレフケラトメーターでは、屈折度数や角膜曲率などを計測できます。眼科に行くとよくある、中を望めて気球や家を眺めて検査する機械です。

光学式眼軸長測定装置は、目の奥行きを測定します。風が出たりすることはありませんが、上記の機械よりも数秒長く目を開けるよう指示されることが多いかもしれません。
4. 血液検査・感染症チェック
白内障手術は短時間で終わる安全な手術ですが、感染症のリスクを減らすために血液検査を行います。
特に糖尿病や免疫低下がある場合は慎重に対応する必要があります。
術前検査で分かる手術の適応と注意点
白内障手術が適している人
- 目の状態が安定している
- 白内障が進行し、日常生活に支障をきたしている
- 他の眼疾患がなく、手術によって視力回復が期待できる
手術の際に注意が必要な人
- 緑内障が進行している方…眼圧管理に注意
緑内障が進行している方が白内障手術を受けられる場合、術中の眼圧管理が重要になってきます。通常、白内障手術は眼圧を上げた状態でないと行えません。当院では、白内障手術中の眼圧が一定になるように管理する、特別な白内障手術機器を使用しています。(センチュリオンアクティブセントリー) - 角膜内皮細胞が少ない方…手術のリスクが高い
角膜内皮細胞は一度減ってしまうと元の数には戻りません。そして、角膜内皮細胞が減ると視力が出なくなる場合があります。白内障手術を行うと、どうしても角膜内皮細胞が減るため、もともと内皮細胞が少ない方に白内障手術を行うと、視力が出ないことがあるため、慎重な判断が必要です。 - 糖尿病網膜症の方…網膜の状態によって視力回復が制限される可能性がある
糖尿病網膜症など、網膜(特に黄斑部分)に異常がある方は、白内障手術を行っても視力が出ないことがあるため、慎重な判断が必要です。
これらの条件を総合的に判断し、手術のメリット・デメリットを考えた上で最適な治療方針を決定します。
術前検査の流れと所要時間
術前検査は短時間で終わりますが、しっかりとした準備が必要です。
- 問診・視力測定(10分)
- 眼軸長測定・角膜曲率測定(10分)
- 眼底検査(30分) ※目薬で瞳孔を広げるため待ち時間が必要
- レンズ度数決定・医師との相談(10分)
合計:約1時間~1時間半
事前にコンタクトレンズを外しておく必要があったり、瞳孔を広げる点眼を必要、医師の指示に従ってください。
まとめ!安心して手術を受けるために
白内障手術は技術の進歩により、安全性が高くなっています。しかし、術前検査を適切に行わないと、手術後に「思ったほど見えない」といったトラブルが発生する可能性があります。
術前検査のポイント
✅ 目の奥の病気をチェックし、手術後の見え方を予測
✅ 角膜内皮細胞の状態を確認し、手術のリスクを評価
✅ 眼内レンズの度数を正確に決定する
✅ 感染症や全身疾患の影響をチェックする
白内障手術を検討されている方は、まずは適切な術前検査を受け、医師としっかり相談することが大切です。
白内障手術で最も重要なのは、手術後の生活の質の向上であり、患者さん自身の満足度です。そのため、ていねいな検査の上で眼科医としっかり相談し、ご自身の生活スタイルに合った眼内レンズを決定することをおすすめします。
ご自身が「信頼できる!」と感じたクリニックで検査を受けることが重要ですので、白内障手術を検討されている方は信頼できる医師のもとでいろいろと相談をされてみて下さい。
「どういったクリニック・病院で白内障手術の相談をすればよいのか?」「どういった眼科医が名医と呼ばれるのか?」という点については、以下の記事で詳しく書かせて頂いておりますので、気になる方は合わせてご覧ください。
医療法人社団慶月会では、患者さんに寄り添い、生活スタイルを詳しくお伺いした上で、より適切な眼内レンズをご提案させて頂いています。
また、実際の手術は白内障手術はもちろんのこと、硝子体手術という難しい手術を専門で行っている医師が行います。
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