近年、緑内障は多くの方にとって身近な目の疾患となりつつあります。そのなかでも「狭隅角(きょうぐうかく)」や「閉塞隅角(へいそくぐうかく)」と呼ばれる状態は、急性緑内障発作という重篤な症状を引き起こすリスクがあり、眼科において特に注意を要する問題の一つです。
本記事では、こうした狭隅角や閉塞隅角の改善を目的に行われる**LI(レーザー虹彩切開術 / Laser Iridotomy)について詳しく解説します。LIは、白内障手術に代わる一時的対処法として有用であり、短時間・比較的低リスクで行える治療法です。治療の流れやリスク、白内障手術との比較など、気になる情報を網羅的にお届けします。
下記のYouTube動画では、年間3万人以上を診察する眼科専門医の上月が対談形式で、最新の治療法をわかりやすく説明しています。治療に対する理解を深めるために、ぜひ合わせてご覧ください。
狭隅角・閉塞隅角とは何か?

隅角(ぐうかく)とは、眼内の「前房(ぜんぼう)」と呼ばれる領域にある、房水(ぼうすい:目の中を循環する液体)の排水路付近を指します。
正常な目では、この隅角がしっかりと開いており、房水の流れはスムーズ。
しかし、何らかの理由で隅角が狭くなる(狭隅角)あるいは閉塞する(閉塞隅角)と、房水がうまく排出できず眼圧が急上昇するリスクが高まります。
その他の緑内障の原因としては「開放隅角緑内障」と呼ばれるものもあります。緑内障の原因に関しては以下の記事をご覧ください。

急性緑内障発作の怖さと予防策
狭隅角・閉塞隅角が引き金となりうるのが、急性緑内障発作です。
これは目の中の圧力(眼圧)が急激に上昇し、視神経を強く圧迫してしまう状態。この発作が起きると、激しい痛み、視力低下、吐き気など、非常に危険な症状が現れます。
放置しておくと失明に至ることも十分に考えられます。
眼科領域では「救急車で来院してもよいレベルの緊急事態」と言われるほど重篤な状況を招くことがあります。
こうした発作を未然に防ぐために、狭隅角や閉塞隅角が認められた場合、早期の対策が求められます。
急性緑内障発作について詳しくは以下のページをご覧ください。
LI(レーザー虹彩切開術)とは



LI(Laser Iridotomy:レーザー虹彩切開術)は、虹彩(こうさい:瞳孔をとりまく色素部分)に小さな穴をレーザーで開ける治療法です。
こうすることで、房水が水晶体(すいしょうたい)周囲に溜まりにくくなり、隅角が狭くなるのを防ぎます。結果的に、隅角が広がりやすい状態を作り出し、急性緑内障発作のリスク軽減につながります。
LI施行時の流れと所要時間
LIはレーザーを用いるため、手術室ではなくクリニック内の処置室で気軽に行えることが多いです。
所要時間は約5~10分程度。
流れの一例としては、
- 診察室で隅角の状態を確認
- 処置室へ移動
- 局所麻酔後、アルゴンレーザーで虹彩を慣らすように連続照射
- 次にヤグレーザーを用いて最終的な穴を開ける(最後の一発がやや衝撃あり)
- 術後、短時間待機して眼圧を確認
- 問題なければ即日帰宅可能
「今からやりましょう」といったスピーディーな対応が可能な点も魅力です。
痛み・不安・合併症はあるのか?
多くの患者さんにとって、LIはほとんど痛みがない治療です。
ただし、ヤグレーザー照射時に「ピクッ」とした軽い衝撃を感じることがありますが、強い痛みとは異なり「驚く」程度がほとんどです。
患者さんからの不安としては、「本当に痛くないのか?」「怖くないのか?」という質問が多いですが、実際に「痛くて耐えられなかった」という報告はほぼありません。
経験豊富な眼科医であれば、安心して受けられる手術です。
治療前に知っておきたいリスクと注意点
LIの代表的なリスクとしては、角膜内皮細胞(かくまくないひさいぼう)へのダメージが挙げられます。
角膜内皮は角膜の透明性を維持する重要な細胞層で、これが減少すると角膜がむくみ(水疱性角膜症)を起こし、視力低下につながります。
とはいえ、現代の医療水準では、LIで角膜内皮細胞が大きく減少し重篤なトラブルになるケースは稀です。
また、術前に「スペキュラーマイクロスコープ」という計測機器で内皮細胞数を確認すれば、リスクを事前に把握できます。
もともと内皮細胞数が極端に少ない場合は、LIより白内障手術を検討するなど、柔軟に対応することが可能です。

白内障手術との比較―どちらを選ぶべきか?
隅角狭窄への根本的な解決策として最も確実とされるのは、白内障手術です。実は、水晶体自体が厚くなり隅角を押し広げられない状況では、水晶体を取り除いて人工レンズに置換することで、房水の流れが抜群に改善します。
しかし、以下のような理由で白内障手術をすぐに受けたくない方もいます。
- まだ若くて白内障が進行していないのに手術を受けるのはもったいない
- 老眼が進むなど、手術後の屈折状態変化を避けたい
- 白内障手術が怖い
こうしたケースで、とりあえず狭隅角状態を改善する中間的措置としてLIが選択されることがあります。
狭隅角に対する白内障手術に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
LIが適用となるケースと減少傾向の背景
以前は、白内障手術の技術が確立されておらず、合併症リスクも高かったため、LIが広く行われていました。
しかし、近年は白内障手術の安全性が飛躍的に向上し、手術で失明リスクや深刻な合併症が極めて低くなっています。
そのため、現在では「隅角が狭いなら、最初から白内障手術をしたほうが安心」という流れが強まり、LIの出番は相対的に減少しています。
それでも、若年層でまだ水晶体を残したい場合や、白内障手術への強い抵抗感がある方にとって、LIは依然として有用な選択肢です。
術後のケアとクリニック選びのポイント
術後は、基本的に特別なアフターケアは必要ありません。眼圧が一過性に上昇する可能性があるため、施行直後はクリニックでしばらく待機しますが、問題がなければそのまま帰宅できます。痛みや炎症も少なく、通常の生活へすぐに復帰できるケースがほとんどです。
クリニックを選ぶ際は、以下のポイントに注目しましょう。
- アルゴンレーザー、ヤグレーザーなど必要機器が完備されている
- 内皮細胞数を計測できる「スペキュラーマイクロスコープ」がある
- 白内障手術が可能な施設であれば、内皮細胞管理もより徹底している傾向があるためより良い
これらを満たすクリニックなら、より安心してLIを受けることができます。
まとめ―LIは狭隅角対策の有力な一手
狭隅角・閉塞隅角から起こりうる急性緑内障発作は、放置すれば失明につながりかねない恐ろしい状態です。
その予防策として、白内障手術が根本的解決策となることが多いですが、年齢や生活スタイル、白内障の進行度合いなど、様々な要因で手術を先延ばしにしたい場合もあるでしょう。そんな時、LIは発作のリスク軽減に寄与します。
LIは短時間、低侵襲で行える治療であり、適切な条件下ではほとんど合併症リスクを心配する必要はありません。担当医との十分な相談を経て、内皮細胞数などのチェックを行った上で受ければ、安心して施術に臨めます。
目の健康は日々のケアや定期的な検診が欠かせません。もし眼科医からLIを提案されたら、この記事や動画の情報を参考に、リスクとメリットを理解して前向きに検討してみてください。
youtube動画では年間3万人以上の患者を診察している院長の上月が、対談形式でわかりやすく説明しておりますのでぜひ合わせてご覧ください。
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