眼球打撲後に、上記のような自覚症状がある場合は速やかに眼科を受診するようにしてください。自覚症状がない場合も、強く眼をぶつけた場合には早めに眼科を受診しましょう。
眼球を打撲することによって、以下のような障害(眼球打撲傷)を起こすことがあります。
網膜剥離
網膜に穴が開いたり、裂けたりして、そこから網膜が剥がれてしまうことがあります。これを網膜剥離といい、症状としては、黒い点や糸くずが見える(飛蚊症)、光が走って見える(光視症)、視界の一部が見えにくい(視野障害)などが起こるとされています。
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白内障
白内障とは、目の中でレンズの役割をしている水晶体という部分が濁ってしまう病気ですが、この白内障が外傷によって起こることがあります(外傷性白内障)。症状としては、視力低下、まぶしい、霞んで見えるなどが起こるとされています。
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角膜外傷
目の表面を担う角膜(黒目にあたる部分)が障害された状態です。最表層のみが微細に障害されたものを表層角膜症、それより深く障害されたものを角膜びらん、さらに深く障害されたものは角膜潰瘍といわれます。症状としては、目の痛み、ゴロゴロする、涙が出る、充血などが起こるとされています。
結膜裂傷
目の表面を担う結膜(白目にあたる部分)が裂けることがあります。
前房出血
目の中に前房という空間(角膜後面と虹彩前面との間)があります。通常、前房は房水(目を栄養している水)で満たされています。外傷による出血が前房内に流入、貯留した状態を前房出血といいます。外傷後、1週間以内は再出血を起こす可能性があるため、運動などを控えるようにしなければなりません。
隅角解離・虹彩離断
外傷により、隅角部(眼圧値のコントロールに重要となる部分)が後ろに押し下げられることがあり(隅角解離)、さらに外力が強いと虹彩が裂ける(虹彩離断)こともあります。虹彩離断では上記した前房出血を伴うことも多いです。
外傷性虹彩毛様体炎
外傷により、虹彩(前房を形成する組織)や毛様体(虹彩の隣の組織)に炎症が生じた状態です。虹彩毛様体炎はぶどう膜炎と呼ばれることもあります。症状としては、前房内の炎症細胞によって霞んで見えたり、炎症による充血や目の痛みを生じたりするとされています。合併症として白内障や緑内障、虹彩以外の部分へ炎症が波及することもあります。
水晶体脱臼
通常、水晶体(目の中でレンズの役割している部分)は、毛様体小帯(チン小帯)という組織に支えられ正しい位置で保たれています。外傷によって、この毛様体小帯が切れてしまうと水晶体が脱臼してしまうことになります。程度によって亜脱臼(不完全な脱臼)と完全脱臼に区別されます。
眼窩底骨折
眼科底骨折とは、眼窩(眼球およびその付属器が入る)への鈍的外傷によって、眼窩下壁の骨折を来したものをいいます。下直筋とその周囲の組織が上顎洞に嵌頓するため、上を向くことが難しくなります(上転障害)。眼球運動障害以外の症状としては、物が二重に見える(特に上転時)、眼球が凹んでみえる(眼球陥没)などがみられることもあります。
網膜振盪症
網膜に浮腫(むくみ)が生じた状態で、この部分は乳白色に混濁します。通常、この浮腫は数週間程度で吸収されるとされています。網膜の周辺部で起きやすいため、自覚症状がないことが多いですが、網膜の中心部で起きた場合は一過性の視力低下を生じることもあります。
外傷性視神経炎
外傷により視神経管(視神経が入っている骨の管)が骨折することがあり、これによって視神経に障害を来した状態を外傷性視神経症といいます。症状としては、視力低下や視野障害(視界の一部が見えにくくなる)が起こるとされています。
通常の視力検査、眼圧検査に加えて、前眼部・眼底検査を行います。必要に応じて、視野検査(視界で見えにくい部分はないか)や斜視検査(物が二重に見えていないか)、眼球運動検査(目の動きの確認)などを行う場合もあります。
目薬や軟膏での治療をはじめ、障害の程度によっては、レーザー治療や手術が必要となる場合もあります。
応急処置として、目の周りに腫れや内出血がある場合は冷やすことが重要です。眼球打撲後には、このように様々な障害が起こる可能性があります。
その時は症状がなかったとしても、数時間・数日後など後から症状が出てくることがあったり、適切な時期に治療を受けないと後遺症が残ったりすることがありますので、目の周りをぶつけたらできるだけ早く眼科を受診するようにしましょう。