緑内障は、視神経を損傷させることで視野の狭窄や失明につながる可能性がある病気です。
この疾患は進行が緩慢で自覚症状が少ないため、発見が遅れがちです。
本記事では、緑内障の原因を詳しく解説し、症状や予防方法についても説明します。
これから紹介する情報を参考にして、緑内障に関する知識を深め、自分や家族の目の健康を守るための取り組みを始めてみてください。
youtubeにて当院院長の上月が緑内障の予防のひとつであるLI(レーザー治療)について詳しく解説しておりますので、よろしければこちらもご参考ください。
緑内障とは?
緑内障とは、眼圧(目の形状を維持するための一定の圧力)によって、視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。
40歳以上の20人に1人は緑内障であるという報告もあるため、決して珍しい病気ではありません。1)
1)日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(通称:多治見スタディ)より
眼圧が高くなる仕組み
視神経の強さには個人差がありますので、「眼圧が高い=緑内障になる」ということではありませんが、眼圧が高いことで緑内障の発症リスクは上がります。
圧の値には、房水(眼内を満たす透明な水)の量が関係しています。
眼内の房水の量が増えると眼圧は上がっていきます。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
緑内障の発症には、さまざまな要因が関与していますが、眼圧(目の硬さ)の管理が重要な役割を果たしています。
眼圧が適切な範囲に保たれることで、視神経へのダメージが最小限に抑えられ、緑内障の進行を遅らせることが可能です。
しかし、眼圧だけでなく、遺伝的要素や加齢、一部の疾患や薬物の使用なども緑内障のリスクを高めることがあります。
緑内障は初期の段階では自覚しにくい病気でもありますので、予防や早期発見に向けて、定期的な眼科検診を受けることが重要です。
緑内障の原因と分類
緑内障の分類については専門用語が多く、読まれている方の中には、「よくわからない」、「難しい」と感じる方がおられると思います。
ここではシンプルにわかりやすくまとめていきます。
全ての分類において、「緑内障=眼圧によって視神経が障害されている状態」という基本的な考え方は同じです。
また、実際に眼科を受診して緑内障と診断された場合には、医師から原因・分類についてしっかりと説明がありますので、ご安心下さい。
原発性緑内障(原因不明なもの)
原発性とは「具体的な原因が見当たらない」という意味を表し、原発性緑内障は以下の3つに分類されます。
原発開放隅角緑内障(広義)
隅角(房水の通り道)は広いですが、排水経路からうまく房水が流れずに緑内障を発症してしまうものを原発開放隅角緑内障と言います。
これには眼圧が高いタイプと高くないタイプの2種類があります。それぞれ解説していきます。
原発開放隅角緑内障(狭義)
原発開放隅角緑内障の中でも眼圧が高いタイプです。
眼圧の正常値は10mmHg〜21mmHg程度とされていますが、この原発開放隅角緑内障(狭義)では、眼圧の値が正常範囲より高値を示します。
また、眼圧は高値だが、視神経が障害されていない場合は緑内障とは呼ばずに、「高眼圧症」という呼び方をされます。
正常眼圧緑内障
原発性緑内障の中でも眼圧が高くないタイプです。
「眼圧の正常値は10mmHg〜21mmHg程度」と申し上げましたが、正常眼圧緑内障では20mmHg以下にもかかわらず緑内障を発症します。
視神経が「正常値」の眼圧に耐えられないことや、視神経の血流が悪いことなどが原因として考えられています。
この場合、点眼などでなるべく眼圧を下げることで、その方個人にとって緑内障を進行させない眼圧を保つ治療が有効とされています。
この型が日本人の緑内障に一番多いとされ、約70%を占めると言われています。2)
参考文献:2)所敬. 現代の眼科学 改訂第12版. 金原出版, 2015 , 242.
原発閉塞隅角緑内障
隅角が狭いため(水晶体の相対的位置異常や浅前房に伴うもの)、房水の通り道が塞がりやすく、眼圧上昇を引き起こします。
慢性的に経過することもありますが、何らかの原因で隅角が完全に塞がってしまうと「急性緑内障発作」を引き起こし、急激に眼圧が上昇します。
急性緑内障発作については次で詳しく説明します。
急性緑内障発作
「急性緑内障発作」とは「閉塞隅角緑内障」の方が何らかの原因で隅角が完全に塞がることで起こる非常に危険な発作です。
急激に眼圧が上昇することで、以下の症状が起こります。
眼所見としては、
急性緑内障発作は、一晩放置しておくと失明に至る可能性がある怖い病気です。
そのため、直ちに眼圧を下げる処置を行う必要があります。
詳しくは下記のリンクをご覧ください。
閉塞隅角緑内障の治療・急性緑内障発作の予防として、特に高齢の方に対しては「白内障手術」が推奨されます。
緑内障なのに白内障手術?と思われるかもしれませんが、白内障手術では目の中にある水晶体を薄い人工レンズに取り替えます。
これによって、房水が流れにくい部分がスムーズに流れるようになり、急性緑内障発作の予防になります。
当法人では閉塞隅角緑内障に対する白内障手術を得意としておりますので、お気軽にご相談ください。詳しくは以下のリンクをご覧ください。
発達緑内障(先天緑内障)【生まれつき異常があるもの】
生まれつき、房水の通り道である隅角に発育異常があることで眼圧が上昇し、視神経が障害されます。
生後1歳までに約80%が発症するとされ、生まれた時に起こっている場合は「先天緑内障」と呼ばれます。
などがみられます。3)
参考文献:3)日本小児眼科学会.「子どもの眼の病気-発達緑内障(先天緑内障)」
続発性緑内障(他の疾患など原因が明らかなもの)
緑内障以外の目の病気や全身疾患、ステロイド薬などの薬物が原因となり、眼圧が上昇します。
代表的なものとしては、
などが挙げられます。
また、落屑物質と呼ばれるフケ状の物質が線維柱帯に沈着することが原因で起こる落屑緑内障というものもあります。
緑内障の危険因子(リスクファクター)
緑内障は多因子疾患と言われ、原因が1つとは限りませんが、以下のものが危険因子となります。
年齢
40歳ごろから発症する頻度が高まるとされています。40歳以上の20人に1人は緑内障であるという報告もあります。
しかし、緑内障は初期の段階では自覚症状がないことも多いため、40歳を過ぎたら定期的な眼科検診を行うことをおすすめします。
遺伝
遺伝の影響で必ず緑内障を発症するということはありませんが、血縁関係者に緑内障の人が多ければ多いほど、緑内障を発症するリスクが高まるとされています。
強度近視
c
強度近視では眼軸(目の長さ)が長いため、眼球が通常の目より引き延ばされて、視神経が障害されやすい状態です。
そのため、近視が強いということは緑内障を発症するリスクを高めるとされています。
喫煙・飲酒
適度な飲酒は問題ありませんが、過度な飲酒は眼圧上昇や視神経障害につながります。
また、喫煙は眼圧を上昇させるだけでなく、他の眼疾患(白内障、加齢黄斑変性症など)の発症リスクを高めます。
緑内障と診断された方は適度な飲酒と禁煙を心掛けて下さい。
高血圧
「高血圧=眼圧が高くなる」ということはありませんが、高血圧の状態が続くとその他の眼疾患を引き起こす可能性がありますので、しっかりと内科にて血圧の治療をして頂くことは大切です。
糖尿病
糖尿病では、眼圧が高くなりやすいとされています。
また、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症が進行すると「血管新生緑内障」を併発することもあります。
緑内障の症状
視野障害(見える範囲が狭くなる)が代表的な症状です。
人によっては、まぶしさやかすみの症状を感じる方もおられますが、基本的に緑内障は初期の段階では自覚症状がほとんどないため、自覚しにくい病気であると言われています。
そのため、気がついた時には視野障害がかなり進行していることもある怖い病気です。
さらに、緑内障で一度失った視野は戻らない(回復しない)ため、早期発見・早期治療が大切です。
緑内障の診断方法
視力検査
緑内障による視力障害の程度や位置によって視力が低下することがあるので視力検査を行います。
眼圧検査
眼圧(目の硬さ)がどの程度か測ります。空気の当たるノンコンタクト式と、診察室で図るコンタクト式があります。なお、眼圧が21mmHgを超える場合には注意が必要ですが、眼圧が高くても緑内障にならない方もいれば、正常眼圧(20mmHg以下)でも緑内障と診断される方(正常眼圧緑内障)もいらっしゃいます。
無散瞳眼底カメラ
眼底(目の奥の状態)を確認し、「視神経乳頭陥凹」の状態を確認します。瞳孔を開く目薬を使用せずに撮影が可能なため、患者さんへの負担が軽減できます。
三次元光干渉断層計(OCT)
視神経の厚みを、特殊なレーザーで確認します。瞳孔を開く目薬は必要ありません。OCTによって、今までの眼底検査では発見できなかった初期の緑内障を発見することが可能になりました。当院では最新・最高級モデルのCirrus HD-OCT plus 5000を導入しており、精密な検査が可能です。
自動視野計(ハンフリー視野検査)
見える範囲を測定します。白い部分は見えているところで、黒い部分が見えていないところです。(正常の黒い部分はマリオット盲点と言われ正常なものです)当院の視野計は最新のものを置いており、過去のデータと比較し悪化したかどうかをコンピューターが判断してくれるため正確な診断が可能です。
緑内障の予防と治療
緑内障は、眼圧によって視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなる病気ですので、眼圧を下げることで治療を行っていきます。緑内障で一度失った視野は回復しないため、今の視野を保っていくこと(進行予防)が治療の目標となります。早期に治療を始めることで生涯にわたって視機能を維持する可能性は高まります。
点眼治療
慢性的な緑内障に対しては、点眼治療が基本的な治療法となります。点眼薬の種類は複数ありますので、基礎疾患や生活スタイルに合わせて医師が適切に種類を選択します。
緑内障の状態によっては、点眼薬を2剤目、3剤目と追加して治療をしていくこともあります。
また、急性の眼圧上昇などでは、医師の判断で、早急に眼圧を下げる目的で点滴を使った治療を行う場合があります。
緑内障の目薬に関して詳しくは下記の記事をご覧ください。
SLT(レーザー線維柱帯切除術)
特殊なレーザーを線維柱帯に照射して、房水の流れをよくすることで眼圧を下げる治療です。
隅角光凝固術は、選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty:SLT)としても知られており、点眼治療だけでは眼圧を十分に下げることができない開放隅角緑内障の患者さんに対するレーザー手法です。
この治療では、房水の排出部分となる線維柱帯に、低エネルギーの短波長レーザーを当てることで、房水の流れを良くし、眼圧を下げる効果が期待されます。このレーザー治療を受けると、半年から数年間、眼圧が安定して低い状態を保つことができ、点眼薬のように使用を忘れて眼圧が上がるリスクが減少します。
さらに、目の構造に変わりがないので、何度でもレーザー治療を受けることが可能です。
虹彩光凝固術(LI)
虹彩光凝固術は、レーザー虹彩切開術(LI)としても知られています。こちらは閉塞隅角緑内障の方に有効です。
閉塞隅角緑内障の場合、眼の中の房水が流れる隅角が閉じてしまい、その結果眼圧が上昇します。
この治療では、レーザーを使用して虹彩に微細な穴を開けることで、虹彩の背面から前面への房水の流れを確保し、隅角の閉塞を予防します。
LIに関して詳しくは以下の記事をご覧ください。

白内障手術(超音波乳化吸引術)
白内障手術では、水晶体の代わりに人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入しますが、この眼内レンズは非常に薄いため、房水の通り道である隅角を広げて、眼圧を下げる効果が期待できます。
元々、隅角が狭い閉塞隅角緑内障の方や加齢に伴う水晶体の膨化で隅角が狭くなっている方など、狭隅角の方に対して有効です。
先にも述べたように、狭隅角の状態は急性緑内障発作という放置すると一晩で失明することもあり得る病気が突如引き起こされる可能性が高いため、予防としての白内障治療をおすすめさせていただくことが多いです。
当院は狭隅角の方に対する白内障手術を得意としておりますので、お気軽にお問い合わせください。

緑内障手術
医師の判断で、手術が必要になることがあります。術式は「線維柱帯切開術(トラベクロトミー)」や「線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」など様々ありますので、慎重に術式を選択していくことになります。
また最近はMIGSといった侵襲の少ない緑内障手術を行うことも増えています。
緑内障手術は高頻度で合併症を伴うため、当院から緑内障手術をする際には緑内障手術に卓越した医師を紹介させて頂いております。
緑内障を予防するために
繰り返しにはなりますが、緑内障で失われた視野を回復させることはできませんので、緑内障にならないための予防が非常に大切です。
定期的な眼科検診
緑内障は、決して珍しい病気ではありませんが、症状がかなり進行するまで自覚症状がないことが多く、怖い病気の1つです。
早期発見するためには、定期的な眼科検診は有効で、特に目の自覚症状がない方でも年に1回程度の定期受診をおすすめしています。
眼圧を適切に管理する
一度、緑内障と診断をされたら症状を進行させないよう眼圧を下げることで、進行予防をしていきます。
点眼治療をはじめとする治療で眼圧を適切にコントロールしていくことが大切です。
食生活
食事面に関してはあまり過度に意識しすぎることはありませんが、健康的なバランスのよい食事を心掛けて頂くことは大切で、緑内障以外の病気の予防にもつながります。
ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンE)やミネラルが豊富な食べ物は目によいとされています。
また、カフェインの過剰接種や水分を一気にとることで、眼圧を上昇させる可能性がありますので、注意が必要です。
適度な運動
ウォーキングなどの有酸素運動は眼圧を下げる可能性が報告されており、健康維持にも有効です。
注意が必要な点は、心拍数が上昇するほどの過度な運動や激しい筋トレでは眼圧が上がる危険性があります。
アルコール・喫煙の管理
適度な飲酒は問題ありませんが、過度な飲酒は眼圧上昇や視神経障害につながるとされています。
また、喫煙は眼圧を上昇させ、他の眼疾患(白内障、加齢黄斑変性症など)の発症リスクを高めます。
定期的に目を休める
交感神経が優位な状態では眼圧は上昇しやすいです。ストレスがかかると交感神経が刺激されやすいため、ストレスを溜めないように心掛けることは大切です。
また、最近では「若年性緑内障」が問題視されており、スマホやパソコンの使用時間が増えたことによって、眼に負荷がかかり、眼圧が上がりやすくなるとされています。
適度に目を休めることを意識して下さい。
まとめ
緑内障は、自覚症状に乏しく、一度失った視野は回復しないため、怖い病気ですが、早期に治療を始めることで生涯にわたって視機能を維持する可能性は高まります。
そのため、早期発見・早期治療がとても大切です。
40歳以上の20人に1人は緑内障であるという報告もあり、決して珍しい病気ではありませんので、目の自覚症状がない方でも、年に1度程度の定期受診するようにして下さい。
自覚症状が全くなくても「緑内障が気になって来ました」とおっしゃっていただければ大丈夫です。お気軽にご来院ください。
また、当院では世田谷区眼科検診や北区眼科検診も受け付けておりますので、区内で対象の方はぜひご来院ください。
もちろん、健康診断で指摘を受けた場合の精密検査も受け付けております。
医療法人社団慶月会では、熟練の医師による緑内障診療を行っております。
経堂こうづき眼科と王子さくら眼科、2院展開しておりますので、ご来院しやすい方にお越しください。
経堂こうづき眼科
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土日祝も診療を行っております。(木曜休診日)
経堂こうづき眼科予約について
緑内障の初診予約は特に承っておりませんので、直接ご来院ください。
王子さくら眼科
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王子さくら眼科予約について
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youtubeにて当院院長の上月が緑内障について詳しく解説しておりますので、よろしければこちらもご参考ください。